【2025年度:保存版】本当は教えたくない!無料で使える3Dスキャン後処理ソフト5選(Blender/ZEISS Inspect/Fusion 360/CloudCompare/Tinkercad)
- 大橋竜也
- 1 日前
- 読了時間: 9分
更新日:14 分前
はじめに:3Dスキャン後処理を制する者が、3D活用を制す
3Dスキャナーで高精細な「点群」や「メッシュ」データを取得しても、それだけではゴールではありません。3Dスキャナーはあくまで現実世界をデジタル化するツール。そのデータをどう活用したいか、という最終目的が最も重要です。
製造業では「取得したデータからCADモデルを復元したい(リバースエンジニアリング)」、あるいは「製品の寸法を精密に測定したい」といったニーズが代表的です。しかし、多くの3Dスキャナーに付属するソフトウェアだけでは、これらの高度な作業は行えません。
そのため、スキャン後のデータは専用のソフトウェアで処理する必要がありますが、高機能なものは非常に高価です。最近では低価格3Dスキャナーが普及し、導入しやすくなった一方で、このような課題に直面するケースが増えています。
この記事は、こんなお悩みを持つあなたにおすすめです。
高性能な3Dスキャナーは高価で、低価格帯のモデルしか検討できない。
デモを見ずにスキャナーを購入し、後処理の方法が分からず困っている。
予算をすべて3Dスキャナーにつぎ込み、後処理ソフトを購入できずにデータが活用できていない。
本記事では、現在3Dスキャンの後処理に悩んでいる方から、これから機材導入を検討している方まで、無料で使える高機能な3Dスキャン後処理ソフトウェアを5つ厳選してご紹介します。
1|無料ソフトウェアのメリット・デメリット
無料で使えることは大きな魅力ですが、いくつかの注意点も存在します。導入する前に、メリットとデメリットをしっかり理解しておきましょう。
メリット | デメリット |
なんといっても無料! 導入コストを抑えられる。 | 公式サポートがない場合が多く、問題解決は自己責任。 |
機能が非常に豊富なソフトウェアもある。 | 商用利用の可否やライセンス条件を自分で確認する必要がある。 |
オープンソースの場合、自社プロジェクトへの組み込みも可能。 | 突然のサービス終了や、アップデートが停止するリスクがある。 |
学習リソースがYoutubeやUdemyなどで低価格で学べるものが多い | 機能が限定的であったり、特定の用途に特化している場合がある。 |
2|Blender — 究極の3D統合環境ツール

公式サイト: https://www.blender.org/
3Dモデリング、アニメーション、レンダリングから動画編集までこなす、まさに万能なオープンソースソフトウェアです。スキャンデータの編集・修正機能も非常に強力です。
ポイント
完全無料&商用利用OK:個人・法人問わず安心して利用できます。
メッシュ編集の王道:スキャンメッシュのノイズ除去、軽量化、形状修正(リトポロジ、スカルプト)が得意です。
3Dプリントに強い:モデルの厚みチェックや、プリンター向け形式(STLなど)でのエクスポートが簡単です。
スキャンデータに使える主な機能
リメッシュ:モディファイア機能で、複雑すぎるメッシュのポリゴン数を自動で調整し、データサイズを軽量化できます。
スカルプト:粘土をこねるように、直感的にメッシュ形状を修正できます。Shiftキーを押しながら表面をなぞるだけで、部分的なスムージング(平滑化)も可能です。
ベイク:高精細なモデルのディテールを、低ポリゴンモデルのテクスチャとして焼き付け、見た目を維持したまま軽量化する高度なテクニックも使えます。
3|ZEISS Inspect — プロ級の検査・解析・レポート作成ツール

世界的な光学機器メーカーZEISS社が提供する、旧GOM Inspectとして知られる検査・測定ソフトウェアです。無償のBasicライセンスでも、驚くほど高機能な解析が可能です。
ポイント
高精度な偏差比較:スキャンデータと設計CADデータを重ね合わせ、差異を色で示す「カラーマップ」を簡単に作成できます。
工業レベルの測定:寸法測定はもちろん、GD&T(幾何公差)解析に対応。工業製品の品質検査や合否判定に活用できます。
厳密な位置合わせ:スキャンデータをCADと同じ座標系に正確に配置するアライメント機能が強力で、リバースエンジニアリングの精度を飛躍的に向上させます。
3Dスキャンと使える機能
金型や成形品の摩耗・変形をCADと比較して可視化。
検査結果を寸法やカラーマップ付きのPDFレポートとして自動生成し、関係者と共有。
リバースエンジニアリングの前工程として、正確な原点出し(座標合わせ)に使用。(幾何要素から平面や線を作成後、オペレーション→位置合わせ→メイン位置合わせ→幾何要素から作成)
4|Autodesk Fusion 360 — 設計から製造までを繋ぐクラウドCAD/CAM

設計(CAD)、解析(CAE)、製造(CAM)の機能を統合した高機能3D-CADソフトウェア。スキャンしたメッシュデータを参照しながら、精度の高いCADモデルを作成するのに最適です。
ポイント
条件付きで無料:個人の非商用利用、または年間売上1,000USD未満のスタートアップ等は無償で利用可能です。※ライセンスは変更される可能性があるため、必ず公式サイトで最新の利用規約をご確認ください。
ハイブリッドモデリング:ソリッド、サーフェス、メッシュといった異なる形式のデータを、同一環境でシームレスに扱えます。
ワンストップソリューション:設計からCAMデータ作成、美しいレンダリング画像の生成まで、Fusion 360内で完結します。
スキャンデータのCAD化に使える機能
メッシュをトレース:スキャンメッシュを下絵のように参照し、その輪郭をなぞるようにスケッチを描いてソリッドモデルを作成します。
フォームモデリング:メッシュ表面にフィットさせながら粘土のように自由曲面を作成し、そこからソリッドボディ化できます。(フォーム→面→オブジェクトスナップでメッシュにフィットするサーフェスも作成できます。)
メッシュ修正:読み込んだメッシュの穴埋め、平滑化、再メッシュ(ポリゴン再分割)などの基本的な編集が可能です。
クアッドメッシュから直接CAD化:データサイズの小さな(約10,000ポリゴン以下)クアッドメッシュであればフォーム環境でOBJ_Quad→Tスプライン→ソリッドボディ化することができます。)
クアッドメッシュで直接出力できる3Dスキャナー
Matter and Form THREE

5|CloudCompare — 大規模点群処理のデファクトスタンダード

もともとは土木や測量分野で開発された、大規模な点群データの処理に特化したオープンソースソフトウェアです。数億点にも及ぶ巨大なデータを軽快に扱えるのが最大の特長です。
ポイント
大規模データに強い:他のソフトでは開けないような巨大な点群データも、ストレスなく表示・編集できます。
高精度な位置合わせ(ICP):複数のスキャンデータを高精度かつ高速に位置合わせする「ICPアルゴリズム」に定評があります。
豊富な解析ツール:ノイズ除去、データの間引き、断面作成、距離計算など、点群解析に必要な機能が豊富に揃っています。
リバースエンジニアリングへのつなぎもできる:3Dスキャンデータの原点出しも可能なので、ここからCADに移してリモデリングすることも可能
注意すべき点
学習難易度が高い:独自のUIと操作性を持っており、習熟するにはある程度の学習が必要です。日本語の情報も限られます。
点群処理がメイン:メッシュ編集機能も搭載されていますが、基本的には点群データの処理に強みを持つソフトウェアです。
6|Autodesk Tinkercad — ブラウザで完結する、やさしい3Dツール

公式サイト: https://www.tinkercad.com/
インストール不要で、Webブラウザさえあれば誰でもすぐに使える無料の3D-CADツール。直感的な操作性が魅力で、3Dモデリングの入門や教育現場に最適です。
ポイント
インストール不要:PCはもちろん、Chromebookなどでもブラウザ上で手軽に利用できます。
直感的な操作:基本的な図形を組み合わせたり、削ったりする「ブーリアン編集」で、パズル感覚でモデリングできます。
教育現場に最適:無償のクラス管理機能があり、生徒の学習進捗を管理しながら3Dデザインと3Dプリント体験を提供できます。
スキャンデータからできること
スキャンしたSTL/OBJデータをインポートし、既存の図形と組み合わせて穴をあけたり、文字を刻印したりといった簡単な編集ができます。
編集したデータは、そのまま3Dプリンター用の形式でエクスポート可能です。
注意すべき点
データサイズに制限:扱えるポリゴン数が少ないため、インポートする前に他のソフト(例:Blender)でメッシュを軽量化しておく必要があります。
機能はシンプル:あくまで簡易的な編集向けで、複雑な形状作成や精密な修正には向きません。
7|機能・目的別 比較早見表
ソフト | 主な用途 | 得意分野 | こんな人におすすめ | 習得難易度 |
Blender | 総合編集・モデリング | 有機的な形状修正、データ軽量化、3Dプリント | 1本で幅広く対応したい人、フィギュアやアート作品を作りたい人 | 低〜高 |
ZEISS Inspect | 検査・測定・解析・リバースエンジニアリングの橋渡し | 偏差カラーマップ、寸法・幾何公差測定、高精度な位置合わせ | 製造業の品質管理担当、リバースエンジニアリングを行う人 | 高 |
Fusion 360 | CADモデリング・CAM | スキャンデータを基にした設計、パラメトリックモデリング | 機械部品の設計者、スキャンからCADデータを作成したい人 | 低~中 |
CloudCompare | 大規模点群解析 | 数億点のデータ処理、複数スキャンの位置合わせ(ICP) | 土木・建築関係者、広範囲をスキャンする人 | 高 |
Tinkercad | 簡易編集・教育 | 直感的なブーリアン操作、ブラウザ完結 | 3D初心者、教育関係者、スキャンデータの簡単な修正だけしたい人 | 低 |
8|まとめ:あなたの目的に合ったソフトを選ぼう
最後に、目的別の最適なソフトウェア(またはその組み合わせ)の選び方をガイドします。
高精度な検査や品質管理がしたい
⇒ ZEISS Inspect が最適。CADと比較してレポートを作成するところまで完結できます。大規模データなら CloudCompare との併用も有効です。
スキャンデータからCADデータを作成(リバース)したい
⇒ ZEISS Inspect で正確な座標合わせ → そのデータを Fusion 360 にインポートしてトレース・モデリング、という流れが黄金ルートです。
スキャンしたメッシュの修正や、有機的な形状の編集がしたい
⇒ Blender が最も強力です。スカルプト機能やリトポロジ機能を使えば、ほとんどのメッシュ編集は解決します。
スキャンデータをアニメーションやゲーム、3Dプリントに使いたい
⇒ Blender 1本でモデリングから最終活用まで可能です。簡単な穴あけや文字入れ程度なら Tinkercad でも対応できます。
教育現場で使いたい、とにかく手軽に試したい
⇒ Tinkercad が最適。インストール不要で、誰でもすぐに3Dデータに触れる体験ができます。
これらの無料ソフトウェアを組み合わせれば、年間数十万円クラスの有料ソフト環境に匹敵するワークフローをコストゼロで構築することも夢ではありません。
まずはあなたの目的に最も近いソフトウェアをダウンロードして、3Dスキャン活用の新たな一歩を踏み出しましょう!
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