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【入門】3Dスキャン方式の基礎知識|種類と違い、選び方を徹底解説

2025年9月18日
読了時間: 9分

3Dスキャン技術は、現実世界の物体や空間をデジタルデータ(3Dモデル)に変換する画期的な技術です。近年、ものづくり、医療、エンターテイメント、建築など、様々な分野で活用が進んでいます。


一方で、3Dスキャナーは3Dプリンターに比べて知名度は依然として低く、3Dスキャナーを販売しているという話をすると途中から「3Dプリンターの会社だよね?」と混同して話を進められてしまうという経験もも良くあります。


「3Dスキャン」と一口に言っても、その原理や方式は一つではありません。対象物や目的に応じて最適なスキャン方式を選ぶことが、効率的かつ高精度な3Dデータ取得の鍵となります。


本記事では、主要な3Dスキャン方式の種類とその原理、それぞれのメリット・デメリット、得意な対象物などを初心者にも分かりやすく解説します。この記事を読めば、3Dスキャナーとはどういったものか、あなたに合った3Dスキャン方式やスキャナーは何なのかがよくわかるでしょう。


3Dスキャン方式の主要な分類


まず、3Dスキャン方式は大きく二つに分けられます。


  1. 接触式スキャン: 測定子の先端を対象物に接触させて、座標を計測する方法。

  2. 非接触式スキャン: 光や音、電磁波などを利用し、対象物に触れずに形状を測定する方法。


現在3Dスキャンとして主流となっているのは、非接触式スキャンです。非接触式はさらに、使用するセンサーや原理によっていくつかの方式に分かれます。接触式はどちらかというと三次元測定機とよばれることが多く、測定用途以外の活用が少ないのでのでここでは「非接触式」の主要な方式を中心に解説し、最後に「接触式」についても触れます。


非接触式スキャンの主要方式

非接触式スキャンには様々な方式がありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。


1. 構造光方式(Structured Light Scanning)

  • 原理: プロジェクターから対象物に対し、特定のパターン光(縞模様など)を投影します。そのパターンが対象物の凹凸によって歪む様子をカメラで撮影し、その歪みを解析することで対象物の3D形状を算出します。

    パターン投影3Dスキャナーの原理

  • メリット:

    • 比較的安価な機種から高性能な機種まで幅広い。

    • カラー(テクスチャ)情報を同時に取得しやすい。

    • 比較的短時間で広範囲をスキャンできる機種がある。

    • マーカーを貼らなくていいため、ディティール面をデータ化しやすい

  • デメリット:

    • 光沢が強い面、透明な面、吸光しやすい黒い面のスキャンが苦手(反射や吸収でパターンが認識しにくいため)。

    • 明るい屋外など、周囲の光が強い環境ではパターン光が埋もれてしまい精度が低下しやすい。

    • 測定範囲は機種によって限定されることが多い。


  • 得意な対象物: 人物、マットな質感の中〜小型部品、彫刻、文化財など。

  • 代表的なスキャナー: LEDを光源とするハンディ型スキャナー、デスクトップ型スキャナーなど。


パターン投影3DスキャナーのMatter and Form THREE
構造光方式の3DスキャナーMatter and Form THREE

2. レーザー方式(Laser Scanning)


レーザー光を利用する方式にも、主に二つの種類があります。


2-1. レーザー三角測量方式(Laser Triangulation Scanning)

  • 原理: レーザー光(点または線)を対象物に照射し、カメラでその反射光がセンサー上のどこに映るかを捉えます。レーザー光源、カメラ、対象物の点で作られる三角形の幾何学的な関係(三角測量)を利用して、対象物までの距離(=形状)を測定します。


    レーザー三角測量方式の3Dスキャナーの原理

  • メリット:

    • 高精度な測定が可能。

    • 構造光方式が苦手とする一部の表面(光沢など)にも対応できる場合がある。

  • デメリット:

    • 一度にスキャンできる範囲が狭い(点または線でスキャンするため、面全体をスキャンするにはスキャナーや対象物を動かす必要がある)。

    • スキャン速度は機種による(高速なものもある)。

    • 太陽光などの強い外乱光に弱い場合がある。


  • 得意な対象物: 精密部品、金型、工業製品など、高精度が求められるもの。

  • 代表的なスキャナー: ハンディ型高精度スキャナー、アーム型スキャナー、据え置き型スキャナーなど。



レーザー3Dスキャナー FreeScanUEPro2
レーザーハンディFreeScan UE Pro2UE Pro2


2-2. レーザーToF方式(Time-of-Flight Scanning)

  • 原理: スキャナーからレーザーパルスを発射し、それが対象物に反射して戻ってくるまでの「時間(Time-of-Flight)」を計測することで、対象物までの距離を算出します。これを高速かつ連続的に行うことで、広範囲の3D形状を取得します。


    ToF方式の3Dスキャナー

  • メリット:

    • 非常に広い範囲(数十メートル〜数百メートル)を高速でスキャンできる。

    • 屋外でのスキャンにも比較的強い。

    • スキャナーから対象物までの距離が離れていても測定可能。

  • デメリット:

    • 三角測量方式や構造光方式に比べて、近距離での分解能や精度は劣る場合が多い(点群密度が粗くなる傾向)。

    • 微細な形状の再現には不向き。

  • 得意な対象物: 建築物、プラント、地形、工場、トンネルなど、大規模な空間や構造物。自動運転車のLiDARセンサーもこの一種です。

  • 代表的なスキャナー: 据え置き型長距離スキャナー、ドローン搭載型LiDARなど。



3. フォトグラメトリ(SfM: Structure from Motion)方式


  • 原理: 異なる視点から対象物を様々な角度で撮影した複数の写真画像を用意します。ソフトウェアがこれらの写真から特徴点(Structure)を抽出し、その特徴点が写真間でどのように動くか(from Motion)を解析することで、カメラの位置と姿勢、そして対象物の3D形状(点群やメッシュ)を同時に再構築します。


フォトグラメトリ3Dスキャン

  • メリット:

    • 特別な専用スキャナーは不要。高性能なデジタルカメラやスマートフォンでも可能。

    • カラー(テクスチャ)情報が非常に豊富で高画質。

    • 非常に広範囲の計測も可能(ドローン写真などを使用)。

    • データ取得自体は撮影なので比較的容易。

  • デメリット:

    • テクスチャ(模様や凹凸)が少なく単調な面(単色の壁、鏡面など)は苦手。

    • 適切な写真撮影スキルが必要(写真の重なり具合、光の条件など)。

    • 3Dモデル生成の計算処理に時間がかかる場合がある。

    • 精度は撮影条件やスキル使用するソフトウェアに大きく依存する。

    • 通常の使用では寸法が正しくでない。


  • 得意な対象物: 建物、景観、文化財、彫刻、人物、ゲームやVR/AR用のアセット作成など、テクスチャが豊富で静止しているもの。

  • 代表的なツール: 専用ソフトウェア(Agisoft Metashape, RealityCaptureなど)、一部のスマートフォンアプリ。


接触式スキャン方式

4. 接触式スキャナー(CMM: Coordinate Measuring Machineなど)

  • 原理: 硬いアームやガントリー構造の先端に取り付けられた微細な測定子(プローブ)を、対象物の表面に物理的に接触させていきます。測定子が触れた箇所のXYZ座標を高精度に記録することで、形状を計測します。


  • メリット:

    • 非接触式スキャンと比較して、はるかに高い精度(数マイクロメートル単位)での測定が可能。

    • 対象物の材質(光沢、透明、黒など)にほとんど影響されない。

  • デメリット:

    • 測定に時間がかかる(一点ずつ接触させるため)。

    • 対象物の表面に傷をつける可能性があるため、扱いに注意が必要。

    • 複雑な形状や深い部分の測定が難しい場合がある。

    • 点群データというよりは、設計上重要な特定点の座標測定や、形状の寸法検査に向いている。

  • 得意な対象物: 精密加工された部品、金型、治具など、非常に高い寸法精度での測定・検査が求められるもの。

  • 代表的な機器: 三次元測定機(CMM)、測定アームなど。


主要な3Dスキャン方式 比較表

方式

原理

精度

測定範囲

速度

得意な対象物

苦手な対象物

代表的な用途

構造光方式

パターン光の歪みを解析

中〜高

小〜中

高速

人物、中〜小型部品(マット)、文化財、歯科

光沢・透明・黒い面、屋外(強い光)

製品開発、医療、VR/AR、人物スキャン、文化財アーカイブ

レーザー三角測量

レーザーとカメラによる三角測量

高〜非常に高

小~大型

中

精密部品、金型、車体ボディ

光沢・透明面(物による)、屋外(強い光)

品質管理、リバースエンジニアリング

レーザーToF方式

レーザーの往復時間計測

中(長距離で有効)

広〜非常に広いものまで

高速(一回で撮れる量が多い)

建築物、プラント、地形、大規模空間

微細な形状、近距離での高精細測定

建築・土木、プラント管理、測量、自動運転LiDAR

写真測量・フォトグラメトリ(SfM)

複数写真からの特徴点解析

低〜高(条件依存で大きく変わる)

小さい〜非常に大きい

写真枚数によって異なる。処理は時間がかかる

建物、景観、彫刻、人物(テクスチャ豊富)

テクスチャが少ない面、高速で動くもの

文化財アーカイブ、建築・土木、ゲームアセット作成、景観測量

接触式

測定子の接触座標計測

非常に高

狭

遅い

精密部品(寸法検査)

複雑な形状、大型対象、表面に傷つけたくないもの

品質検査、寸法測定



どの3Dスキャン方式を選べばいいか? 選び方のポイント


最適な3Dスキャン方式やスキャナーを選ぶためには、以下の点を明確にすることが重要です。


  1. 何をスキャンしたいか?

    • 対象物のサイズ: 手のひらサイズ?車?建物全体?(→測定範囲の広さ)

    • 対象物の形状: シンプル?複雑?微細な凹凸は?(→分解能、方式の得意・不得意)

    • 対象物の材質: 光沢がある?透明?黒い?マット?(→方式の得意・不得意、パウダースプレーの要否)

    • 対象物は動くか? 人物など動くものは高速スキャンや特定方式が必要。

  2. どのくらいの精度が必要か?

    • ミリ単位で十分?それともミクロン単位が必要?(→方式の精度、機種性能)

    • 寸法測定が主目的か、形状取得が主目的か?(→接触式 vs 非接触式、非接触式内の方式選び)

  3. スキャンにかける時間は?

    • 短時間で終わらせたい?(→スキャン速度)

    • スキャン後のデータ処理時間は考慮できるか?(→写真測量など)

  4. 予算はどのくらいか?

    • 安価なものからプロ仕様の高価なものまで幅広い。(→方式、機種による)

    • 高いのをかっておけば間違いない?→Noです。 単に高ければ高精度でなんでも撮れるというわけではなく、高くても機種選定を間違えると全く取れないこともあり、安いスキャナーの方がデータクオリティが高いこともあります。また、プロの目から見てもこの機種なんで高いの?という機種も存在します。

  5. どこでスキャンするか?

    • 室内?屋外?現場?(→環境光の影響、ポータビリティ)



これらの要素を考慮し、上の比較表などを参考にしながら、ご自身の目的に最も合った方式を絞り込んでいくのが良いでしょう。


まとめ

3Dスキャンには、構造光方式、レーザー方式(三角測量・ToF)、写真測量、接触式など、様々な方式が存在します。それぞれに得意なこと・苦手なことがあり、取得できるデータの性質や精度、適した対象物や環境が異なります。

最適な3Dスキャンを実現するためには、「何を」「どのくらいの精度で」「どのように」スキャンしたいのか、目的を明確にし、それぞれの方式の特性を理解した上で選ぶことが非常に重要です。

もし、どの方式が自分に合っているか判断が難しい場合は、3Dスキャンの専門家に相談してみることをお勧めします。


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この記事が皆さまの機種選定の参考になっていたら幸いでございます。



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