低価格3Dスキャナーは歯科用3Dスキャナーとしてでも使える?正直レビュー
- 大橋竜也
- 4月21日
- 読了時間: 5分
更新日:4 日前
歯科用3Dスキャナーとは?
歯科用3Dスキャナーとは、口腔内を非接触でスキャンし、歯や歯列、歯茎の形状を高精度にデジタル化する装置です。一般的には口腔内スキャナーを指しますが、石膏模型をスキャンする固定式のモデルも存在します。従来の型取りに比べて患者の負担が少なく、補綴物の設計や製作を効率化できる点が特徴です。

一方で最近は、10万円台~30万円台で買える3Dスキャナーが一般向けにも増えてきました。「これって歯科でも使えるの?」と気になる導入担当者さんも多いはず。結論から言うと、石膏模型スキャンなら低価格モデルでも“なんとか使える”場合がありますが、ハンディタイプで直接お口の中をスキャンする口腔内スキャンは厳しいのが正直なところです。以下、低価格3Dスキャナーを歯科で使うメリット・デメリットをお伝えします。
低価格3Dスキャナーで「石膏模型」を読むときのポイント
おおまかな流れ
石膏模型を準備する
デスクトップ型の低価格3Dスキャナーに模型をセット
データ化してSTLファイルとして保存
メリット
コストが抑えられる:エントリー機なら30万円以下で導入可能。
精度は可もなく不可もない:±50~100μm(0.05~0.1 mm)程度の誤差で、目安模型や3Dプリント、デザインチェックなら十分。
操作がカンタン:模型を載せてボタンを押すだけ、自動で回転・撮影してくれる機種もあり、ハンディタイプは不向き。固定スキャナーであればスキャン可能
カラー対応など歯科にはない機能も:歯科模型用専用3Dスキャナーの中にはカラー対応がないものもあります。一般向けの低価格帯3Dスキャナーにはカラーデータの取り込みができるものも多くあります。
注意点
精度が甘い:±50μmを超えると細かい歯の凹凸やマージン部の読み取りに不安が残る。
非医療機器:薬機法の規制対象外なので、保障やサポートは販売元次第。トラブル対策は自己責任。
データの互換性:歯科のCADの中にはオープン化されていないデンタルCADシステムもあります。もし低価格帯3Dスキャナーを使いたい場合はオープン化されたシステムを選びましょう。
まとめ:模型の全体形状をざっくり把握したり、試作レベルの設計確認には低価格3Dスキャナーでも十分使えます。ただし、最終的な技工物製作用データとしては一般医療機器として売られている専用の歯科用デスクトップスキャナー(±8 μm程度)を併用したほうが安心です。

口腔内スキャンは「専用機」でないと難しい理由
直接お口の中を計測する難しさ
一般的な低価格ハンディスキャナーはそもそも口の中を撮る想定をしておらず、口の中での焦点距離が一致しません。口腔内は唾液、舌、患者の動きなど不安定要素が多く、部屋の照明環境や機器の位置調整だけで追いつきません。
精度と安全性
歯科用に求められる精度は±10 μm前後。低価格機では再現性が安定せず、補綴物の適合不良につながるリスク大。
医療機器としての認証(PMDA クラスⅡ)を持たない機種は、保険算定もできずトラブル時の保証もありません。
操作性の違い
専用IOS(iTero、Primescanなど)は口腔内にフィットする小型スキャナーと専用ソフトをセットで提供。低価格モデルで同じペン型操作を実現するのは現実的に不可能です。
結論:口腔内スキャンは「専用機」の導入が必須
低価格機ではどう頑張っても精度・安全性、機械構造の面で歯科用途には耐えられません。

保険適用・薬機法のポイント
光学印象の保険点数
令和6年改定で「光学印象採得」100点+技工士連携加算50点が新設。これは歯科用に認証されたIOSでのみ算定可能です。
薬機法認証の有無
口腔内スキャナーはPMDA 管理医療機器クラスⅡの認証が必須。
低価格3Dスキャナーはすべて「非医療機器」扱い。品質保証も限定的です。
歯科用3Dスキャナーが高価な理由
低価格帯3Dスキャナーは汎用性を重視しており、幅広い業界で活躍しています。一方で歯科用3Dスキャナーは模型用であっても医療機器届出などの申請が必要であったり、追加コストがかかってしまいます。そのため、低価格帯3Dスキャナーよりも高価になる傾向があります。また、機種の中には製造業と同じ筐体であってもデンタル用として販売する場合は価格が異なるといったこともあります。安心という面を価格差で担っていると考えるのも一つでしょう。
まずは“ハイブリッド運用”からはじめよう
石膏模型スキャンは低価格機でトライ
専用3DスキャナーとCADソフトを導入となると数百万円以上の初期コストは免れません。まずは30万円前後のモデルで効果を体験。模型スキャナー→オープンCADソフト→試作プリント、という流れを作ってみましょう。
要件が固まったら専用機へ
患者対応や最終補綴の品質を重視する段階で、PMDA認証済みの口腔内スキャナーを検討。
コストと効果のバランスを見極める
機器コストだけでなく、削減できる印象材費・時間、保険点数増加分を併せて5年後までのROIをシミュレーションします。
正直レビューまとめ
石膏模型スキャン:低価格3Dスキャナーでも「ざっくり」使える。初期投資を抑えてデジタル化の手応えを掴みたい人向け。
口腔内スキャン:精度・安全性・保険適用を考えると「専用機」一択。投資が大きい分、長期的な診療効率と患者満足度向上に直結。
おすすめステップ:まずは模型スキャンから始め、デジタルワークフローの基礎を作ってから本命機を導入する。
低価格機の「お試し」で得られる効果と、専用IOSの「本格運用」で得られる成果を天秤にかけ、自院の規模や症例数、予算に合わせたハイブリッドな導入プランを検討してみてください。デジタル歯科の第一歩は、「できること」と「できないこと」を正直に見極めることから始まります。
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