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【完全まとめ】3Dスキャナーで使われる拡張子(STL / OBJ / PLY /FBX)とCADデータ(STEP / IGES)の決定的な違い


3Dスキャナーの購入検討中、直面するのが「どの拡張子で保存すればいいの?」という疑問です。

「3Dプリンターで出したい」「CADで設計に使いたい」「CGソフトで色付きのまま扱いたい」……実は、3Dデータには用途ごとに最適な形式(フォーマット)があります。この仕組みを理解すると、スキャンデータの扱いが一気に楽になり、後のトラブルも激減します。


この記事では、3Dスキャンで一般的に使われるメッシュ形式(STL / OBJ / PLY / FBX)と、製造業・CAD業界で標準のデータ形式(STEP / IGES)の違いを、初心者の方にもわかりやすく比較・解説します。


1. まずは根本を理解!「メッシュデータ」と「CADデータ」の違い


拡張子の話をする前に、最も重要な「データの種類の違い」を押さえておきましょう。ここを混同すると、「スキャンしたのにCADで編集できない!」という問題に直面します。

① 3Dスキャナーが作るのは「メッシュデータ」

3Dスキャナーが生成するデータは、基本的に「メッシュ(ポリゴン)」です。

  • 構造: 無数の三角形(ポリゴン)の集合体で形状を表します。

  • 特徴: 点群を繋ぎ合わせて面にしたもので、実物の凹凸や有機的な曲面を忠実に再現します。昔の3Dスキャナーは点群のエクスポート機能のみでしたが最近の3Dスキャナーはメッシュで出力できないものはほぼありません。(空間3Dスキャナーは現在も点群が主流)

  • 弱点: 「ソリッド(中身の詰まった体積)」としての概念がありません。そのため、一般的な3DCAD(SolidWorksやFusion 360など)で直接読み込んでも、寸法変更やフィレット(角丸)の編集が極めて困難です。

  • 該当する拡張子: STL / OBJ / PLY / FBX

stlでのメッシュデータ
メッシュデータ

補足: Blender、Maya、ZBrushといった3DCGソフトはメッシュを扱うのが得意なため、そのまま編集可能です。一方、設計用の3DCADにとっては「扱いにくいデータ」となります。

このメッシュと3DCADデータの関係はわかりやすく例えるとWordとPDFの関係と似ています。WordからPDFには簡単に変換できますが、PDFからWordには時間がかかります。3DCADユーザーにとって3Dスキャンしたデータは手書きの文章を複合機などでスキャンしてPDF化したような状態と考えていただくとわかりやすいかと思います。


② CADで扱うのは「NURBSサーフェス/パラメトリックデータ」

設計者が普段CADで扱っているのは、数学的な計算に基づいたデータです。

  • 構造: 曲面を数式(NURBSなど)で定義しています。

  • 特徴: 「パラメトリックモデル」とも呼ばれ、履歴(ヒストリー)を持ち、あとから穴の径を変えたり、厚みを変更したりといった設計変更が容易です。

  • 該当する拡張子: STEP / IGES

実際にモデリングしたパラメトリックモデル
パラメトリックモデルデータ

2. 3Dスキャン・メッシュ形式の比較(STL / OBJ / PLY / FBX)


スキャンデータを保存する際、用途に合わせて以下の4つから選びましょう。


■ STL(Standard Tessellation Language)

用途:3Dプリント、CAM、解析シミュレーション

最も歴史が古く、業界標準の形式です。

  • メリット:

    • ほぼ全ての3Dソフト・3Dプリンターが対応しており、互換性が最強。

    • 構造がシンプルでデータが比較的軽い。

  • デメリット:

    • 「色・テクスチャ」情報を持てない(形状のみ)。

    • 曲面近似が粗くなる場合がある。

バンパーをスキャンしたstlのメッシュデータ

■ OBJ(Wavefront OBJ)

用途:CG制作、ゲーム、カラー3Dプリント、文化財アーカイブ

形状だけでなく「見た目」も重視する場合に使われます。

  • メリット:

    • 形状に加え、色・テクスチャ(画像貼り付け)情報を保持できる。

    • CG業界での互換性が高い。

    • クアッドメッシュ状態でも保存ができる。

  • デメリット:

    • STLよりデータ容量が重くなりやすい。

    • 形状データ(.obj)とマテリアル情報(.mtl)、テクスチャ画像(.jpg/.png)が別ファイルになるため、管理に注意が必要。名称不一致や保管している場所が違うと読み込んだ時にカラーが読み取れないこともあります。

OBJでスキャンしたデータ

■ PLY(Polygon File Format)

用途:学術研究、点群データの保存、カラー形状確認

「スタンフォードバニー」で有名な、研究用途から生まれた形式です。

  • メリット:

    • 「頂点カラー(RGB)」を直接データ内に持てるため、ファイル単体で色表示が可能。

    • メッシュ化する前の「点群データ」としても保存・利用ができる。


  • デメリット:

    • OBJ形式ほどの高精細なテクスチャ表現(写真貼り付け)は苦手。

    • 対応していない、格納されているデータが異なるソフトも一部存在する。


■ FBX(Autodesk Filmbox)

用途:VR/AR、ゲーム開発、アニメーション

Autodesk社が開発した、エンターテインメント業界向けの多機能形式です。

  • メリット:

    • メッシュ、テクスチャに加え、アニメーション(動き)やボーン(骨組み)などCGで使う様々な情報が1つのファイルに格納できる。

    • MayaやBlender、Unity、UnrealEngineなどとの連携が強力。

  • デメリット:

    • 製造業(CAD)ではほとんど使われない。

    • 3Dスキャナー側での出力対応が限定的。


3. CADデータ形式の比較(STEP / IGES)と注意点

これらは本来、3Dスキャナーの「生のデータ」ではなく、CADソフト間でデータをやり取りするための「中間ファイル」です。

■ STEP(.step / .stp)

用途:現代の製造業におけるデータ交換の標準

  • 特徴: 国際標準規格(ISO 10303)。ソリッド(体積)情報を正確に伝達でき、現在の製造業で最も信頼されている形式です。

■ IGES(.iges / .igs)

用途:古いCAD/CAMシステムとの連携

  • 特徴: STEPより古い規格。サーフェス(面)情報が中心で、読み込み時に面が欠落したり、ソリッドにならなかったりするトラブルが起きやすい傾向があります。基本的にはSTEPが使えるならSTEPを優先します。


【重要】「スキャナーから直接STEP出力」の落とし穴

カタログなどで「ワンクリックでSTEP/IGES出力可能!」と謳う3Dスキャナーがありますが、これには注意が必要です。

ここで生成されるCADデータは、以下のどちらかであることがほとんどです。


  1. オートサーフェス(自動面貼り): メッシュの表面に、無理やりパッチワークのように曲面(NURBS)を貼り付けたもの。見た目や拡張子自体はCADデータですが、「編集が制限されたデータ」でフィレットをかけたり寸法変更はできません。一方で穴のあけなおしなどは行うことができるので、3Dスキャンでは撮ることができない穴を簡単に開けなおしたり、有機形状をCADに持ってきて操作したいというような用途には非常に有効な状態です。ルアー制作やキャラクター型作り、CADでの簡易編集などに向いています。

    オートサーフェスデータ
  2. 幾何形状の抽出: 円柱や平面など、単純な形状のみをCADデータ化したもの。これはCAD上で出力し寸法を見たりすることができるため、うまく使用すればすべてを形状化できなくもないですが、あくまで決まった形状のプリミティブを抽出することができる程度です。スキャンデータベースから円筒抽出ができるのでその円筒軸を基準としてモデリングができたり設計用途に応じた原点を作成できるのは一つの大きなメリットではありますが、あくまで一部の抽出機能となります。


幾何形状の抽出データ

これらは、設計者が普段扱っている「履歴を持っていて自由に寸法変更できるパラメトリックモデル」とは全く別物です。正しく理解したうえで使用すればもちろん有意義に使えるものですが、「スキャンすれば即座に設計図になる」わけではないことを理解しておきましょう。


現状は私の知る限りオートでリバースエンジニアリングができるソフトウェアはAIベンチャー企業などがトライしているという旨は確認していますが、実際の製品版パッケージとして出されているものはありません。



4. 結論:3DスキャンデータをCADで編集するには?

ここまでの解説で、「スキャンデータ(メッシュ)」と「設計データ(CAD)」の間に壁があることがわかりました。では、スキャンデータを元にCADで設計変更を行いたい場合はどうすればよいのでしょうか?

答えは「リバースエンジニアリング」という工程を挟むことです。


リバースエンジニアリングのワークフロー


  • 3Dスキャン: 対象物をスキャンし、高精度なメッシュデータ(STL/OBJ)を取得する。

  • リバースモデリング(専用ソフトやCADを使用):

    ここでは以下のプロセスで行います。

    1. 3Dスキャナーの原点出し(最重要)この工程を行わずにリバースを開始すると中心軸がずれて適切に回転コマンドが行えなかったり左右非対称なモデルになってしまいます。

    原点を精密に出したスキャンデータ
    原点出し後のスキャンデータ

    2. 3Dスキャンデータを参照にモデリング(通常のCADでも可能だが、モデリング機能のあるリバースエンジニアリングソフトを使用するとより正確なスケッチや面の作成が可能)

  • CADの拡張子で保存


まとめ:拡張子の選び方チャート

  • 3Dプリントしたい / とにかく形だけ欲しいSTL

  • CGやゲームで使いたい / 色を綺麗に残したいOBJ

  • 点群として扱いたい / 簡易的な色情報が欲しいPLY

  • CADで編集・設計に使いたいSTLで保存し、リバースエンジニアリングソフトでCADデータへ変換


3Dスキャナーのデータを活用するには、目的に合わせた拡張子選びと、必要に応じた「変換プロセス(リバースエンジニアリング)」の理解が不可欠です。


気軽に低価格で始めるならMatter and Form THREEとGeomagic Essentials


Matter and Form THREE


Matter and Form THREEは30cm以下の小物の撮影を得意とした低価格3Dスキャナーです。

低価格帯では難しい工業部品のようなエッジの多い部品も高い再現性をもってスキャンできます。


Matter and form THREE



Geomagic Essentials

Geomagic Essentials ではスキャンデータをCADデータに移行するために必要な作業を行うことができる買い切りで使用ができるソフトウェアです。オートサーフェス、幾何形状の抽出はもちろん、精密な原点出しが可能なので今使用しているCADソフトウェア上で参照モデリングを行いたい方には最適なソフトウェアです。(Lite版ではメッシュ修正機能のみ)


Geomagic Essentials の紹介




あなたのプロジェクトに最適なデータ形式は?

スキャンデータの用途(設計、検査、CG、アーカイブなど)によって、最適なワークフローは異なります。「手持ちのCADソフトで読み込めるのか不安」「リバースエンジニアリングまで手が回らない」といった場合は、データの変換サービスや専門家のアドバイスを活用するのも一つの手です。もしより詳しい説明が必要な方はお気軽にお問い合わせください。





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